『翻訳者の全技術 (星海社新書 326)』
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(著) 山形浩生
出版社 ‏ :‎ 講談社(2025/2/19)
ISBN:4065376815
「びっくりするほどよくわかる山形翻訳(+訳者解説)の秘訣が、すっきりくっきりよくわかる。意外と正論です」
ー大森望(『三体』翻訳者)
「確信した。もっと山形浩生は報われていい」
ー読書猿(『独学大全』著者)
異才の翻訳者はいかに本を読み、訳しているのか
ピケティ『21世紀の資本』をはじめ、経済から文学、ITにまで及ぶ多彩な領域で累計200冊以上(共訳含む)を手がけ、個性的かつわかりやすすぎる訳文に定評のある翻訳者が、圧倒的なアウトプットを生む読書と翻訳の秘密を完全公開。「読書は大雑把でもいい加減でもいい」という読書のコツから積ん読の是非、率直すぎて時に物議をかもす訳者解説にこめた思い、アマチュアの生存戦略やフィールドワークの面白さ、本業であるコンサルティングの本質まで縦横無尽に論じた、翻訳者・山形浩生の読書論にして勉強論、人生論。
*本書目次
はじめに
第1章 翻訳の技術
なぜ翻訳をするのか
出発点
翻訳の技術
原文通りに訳すということ
訳者解説の書き方
翻訳の基礎体力
英語について
翻訳の道具
記憶に残る翻訳家
翻訳者になるまで
第2章 読書と発想の技術
読書は大雑把でもいい加減でもいい
読書の意義
本の読み方
積ん読について
本の敷居の高さと期待効用
読まない本の危険性:積ん読の有毒性について
積ん読の時代変化
積ん読の解消
余談:山野浩一のことなど
行きがけの駄賃で:橋本治について
積ん読の先へ
勉強は小間切れでやる
わかったつもりが一番よくない
1週間なら誰でも世界一になれる
アマチュアの強みと弱み
好奇心の広げ方
オカルト雑誌とフェイクニュース
コンサルタントについて思うこと
第3章 好奇心を広げる技術
知らない世界を旅する
旅行をするなら
開発援助の現場に行くこと
社会主義国キューバの衝撃
モンゴルのノマドは自由ではない
変なものが好きだった
あとがき
#61.12_本
翻訳では最初と最後をやり、次に間をチマチマとやる。すると、いつのまにか半分くらい終わるので、ここまで訳したなら残りもやってしまおうとなる(25)
翻訳で差が出るのは訳語を選ぶこと
書き手の言いたいことを、自分ならどういう言葉を選ぶか
例
逓減→だんだん減ってくる
money→お金
一九八四
真理省→真実省
今なら事実省にしただろう
でもオーウェルだったらそこまで細かい言い回しにこだわりすぎる必要はないだろう
ジェイムズ・ジョイスなら話は違う
tks.iconここら辺のニュアンス面白い
省の名前は、意味のレベルでは実際の省が行っていることの反対の名前で、音のレベルでは短縮されているというのがポイントで、この2つの点さえ外さなければいいのでそこまで苦労しなかった
原文が不自然なら翻訳も不自然で当然
→原文に忠実な翻訳者
訳者解説は本の背景情報を提供する
翻訳は読む人にとっての常識と、書く人の常識をすり合わせる作業(50)
翻訳家のスキルはただ外国語を翻訳する語学力だけではなく、読書の経験値や想定読者の理解なども含まれる(51)
翻訳者評(61)
渡辺佐智江
SF
伊藤典夫
天才型
浅倉久志
秀才型
柳瀬尚紀
天才型
大森望
柳下毅一郎
柴田元幸
秀才型
望月衛
『ブラックスワン』
『ヤバイ経済学』
村井章子
古典でも読みやすい
アダム・スミス『道徳感情論』
野口幸夫
反面教師
途中からおかしくなった
翻訳を文章だけで考えていると変な方向に行ってしまう
翻訳家のスキルはただ外国語を翻訳する語学力だけではなく、読書の経験値や想定読者の理解なども含まれる(51)
第2章 読書と発想の技術
本は取扱説明書のように読め
「この人は何が言いたくて本を書いたのか」を理解するための説明書として読んでいる
読書の意義は、人があらかじめ調べてくれた知識を、自分で調べられるようになることくらいでしかない
自分がその知識をどう使うのか、「これを知ってどうするのか」という意識を持ちながら読む
抽象を抽象でとどめず、自分の具体に少しでも落とす
誰かが自分の代わりに考えてくれたことを学んでいる
「手抜き」をできるようになると、少なくとも自分の眼力の範囲でそのジャンルを理解したと言うこと
誰がどういう意図でものを書いているのかの見取り図が得られた
積読の話
本は流通させなければならない
買う本は70%の尤度で読むつもり
読書をモデル化する
期待効用
本を読むためのコスト(背景知識、書きぶり、用語の難解さ、厚さ)
期待効用の高さに比例する敷居の高さ
本を享受するために要求される気合い
読める可能性がなくなればなるほど、選択肢の価値はどんどん下がる
無価値の山と化した積読を放置しているのは、その人の怠慢であり、未練でしかない
それを「読まなくたっていいんだ」とうそぶくのは誤魔化しで、まして「読まない本にこそ価値がある」と言って見せるのは倒錯
tks.icon一番最後はそうかもね
ではどうするか
損切りする=手放す
読む
1冊読むと気合いが必要なくなる
=幻滅する
tks.icon「読書は筆者に幻滅するために読む行為である」と言えるかもしれない
見切れるようになる
tks.icon頭の中のインデックスが出来上がったと言うことでもある
見切っても手元に残すものはある
いちばん優れた=自分にとって意義深い作品だけ残して始末できる
勉強は小間切れでやる
『クルーグマン教授の経済入門』は自分の勉強メモが始まり
文章も同じ
クルーグマン流動性の罠を否定するつもりで書いた
ちなみにクルーグマンは1998年ごろ、日本はインフレ政策を取れという論文を書いた。でもその論文は、最初はそれを否定するつもりで書き始めたんだという。みんなが懸念している「流動性の罠」なんて理論的にあり得ないと証明しようとしてたのだけど、逆にあり得ることを証明してしまった。そして彼はそこでモデルを受け入れて、自分の先入観を改めた。「わかったつもり」はそうやって検証し続けないと。
tks.iconいい話。